HEROに花束を(完)

適当に着替えると、カレンダーにもう一度ちらっと目をやる。


今は6月。


千秋ちゃん、6月に行事がないなんて嘘。


なにか忘れてない?


「おはよう。」


ドアを開けて居間に出ると、ばあちゃんがおまんじゅうをじいちゃんの写真の下にお供えしている。


「今日は特別ですよ、お父さん。」


歯茎を見せて笑うじいちゃんは嬉しそう。


「ばあちゃん、おはよう。」

耳の遠いばあちゃんにもう一度いう。

「あら、ほのちゃんおはよう。」

そう言ってわたしを手招きする。

「ほら、じいちゃんに挨拶しなさい。」

「じいちゃん…おまんじゅう食べてね。」

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