HEROに花束を(完)

今年、どれだけ涙を流したことか。


悠と出会ってから、わたしは常に悩んで、苦しんで、泣いた。


わたしの告白を、どういう風にとらえているのだろうか。本当に悠と一緒にいてもいいのだろうか。悠は健康なわたしを見てどう思っているのだろうか。


かつて父親に対して滴らせた水滴は、今は悠のために溜めている。


この一年、わたしは悠のことで頭がいっぱいだった。悠を治療して治してあげたくて、勉強に専念して、今目指している大学がある。


夢は医師になること。


今まで夢なんてなかったわたしにとって、とても大きな未来への一歩だ。


携帯を鞄にしまおうとした時、するっと一冊のノートが滑り落ちた。


忙しくて全然開けていなかったこのノートブックは、お守りみたいにいつも鞄の奥底に入っている。


開いた形で床に落ちたノートを拾い上げる。


知らないうちにこぼれ落ちた涙が何十枚にもわたる、男の子が桜の絵を追いかけている絵にしみを作る。


悠っ…悠っ…


その時、ふと、わたしはあることに気づいた。


たくさんのページの下に、文字が浮かび上がってきていたのだ。
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