美魔女オネェに拾われたなら
そして、また何事もなく平穏に仕事をこなす日々を送り倉持さんとの会話も忘れていた頃。

智子さんの娘さんが無事に出産したとの知らせを受けてお休みの今日、あっちゃんとさっちゃんと三人でデパートに来ていた。

智子さんのお孫さんへのお祝いのプレゼントを選ぶためだ。


「さっちゃん!これ可愛いよ!」

そう私が差し出したのはピンクのうさ耳付きの日除けポンチョだ。

「あら、ホントね!それに合わせるならこの服かしら?アカリどうかしらね?」

「そうねぇ、それも合うけどコレもどうかしら?」

「合うー!可愛い!!」

「これにしよ!絶対可愛いもの!」


そうして決まったものをレジに持っていき、お祝いの包装をお願いして待っているあいだに今度は二人して私の服を見始める。

「この間、三人で出かけた時に山のようにまた夏服買ったよね?もう要らない、要らないからね!」


そう釘を刺すと

「えぇー」

とオネェ二人がまぁ、文句を垂れる、垂れる。


「そんな飾らなくて良いからね!もう、十分してもらってるからね!」


そう言って出来上がりの案内を聞いて二人を引連れて商品を取りに行く時、すれ違いざまに懐かしい香りを嗅いだ。


昔、赤ちゃんの頃に一度だけ嗅いだことのある香り。
母が悲しそうに抱きしめていたマフラーからした匂い。
それと同じものを感じた。


思わず振り返るとそちらもこっちを見ていた、そして驚いたような顔をして居たが、案内が再びあったので私は急いで二人とその場を離れてしまった。


この懐かしい香りとのすれ違いが、これから起きるさまざまな出会いの始まりでもあったのだった。
それをまだ知らぬままに、時は進み出す。

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