美魔女オネェに拾われたなら

「そんな風に過ごして来た麗蘭さんも十八歳の春にここを出て、東京の大学に通い始めました。その後は手紙のやりとりでしたが、楽しそうに過ごしていたのに。1年後突然戻って来たのよ。その時にはあなたが麗蘭さんのお腹に居たわ。そしてそこから四ヶ月後に産まれたのがあなたよ」


「その時に元々あまり丈夫でなかった心臓に負荷がかかり、麗蘭さんがやむ無くその手を離す時。私が夏美ちゃんの後見人を名乗り出て引き取ったのよ。でも大っぴらには出来なくてね…。苗字を田中から三郷に変えてその後乳児院からこの施設に移して過ごさせたの」

その当時を振り返っているのか、先生は遠くを見ながら話してくれた。


「麗蘭さんは言っていたわ。あの人の負担にはなりたくない。でも夏美は私の宝物なのと。だから頼みます。と言うのが私が麗蘭さんから受けた最後の言葉…」


懐かしむように言う先生。


「そして、万が一にもあの人が接触を測れば事実や何があったかを必ず夏美は知りたがる。だからこの手紙を残す。でも本人の意思が何より大切だから成人後に渡してと…。成人前に接触があろうものなら必ず阻止してほしい。そう言っていたのよ」

先生は、スッキリとした顔をして言った。


「そして、今日ここにあなたは訪れた。麗蘭さんの予測していた通り成人後のあなたが。だから長年預かっていたこれは夏美ちゃん、あなたに渡すわ」


母もここを出て東京に行き、父に会っていたということだろう。

とにかく私が知りたい答えはきっと、この手紙の中にある。


「先生、お話し頂きありがとうございました。また落ち着いたら近々来ようと思います」


「そうね、またいらっしゃいな。ここもまたあなたの家なのだから…」


そう言われて送り出され、私は帰路につく。

手紙は、新幹線に乗ってから開いた。

そこには確かに私の知りたかった事と、母の父や私への想いが詰まっていた。
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