美魔女オネェに拾われたなら
和やかに食事を終えて、片付けも済んだ頃インターホンが鳴った。



「パンダ引っ越しセンターです!!」


どうやら私の荷物が届いたみたい。



リビングに入る手前の部屋が私に当てられた。
その部屋に荷物を入れてもらうも、家具なんかはある程度あるので大きめのタンスやベットは処分してもらい、家電もリサイクル料の必要なものは払って処分してもらう事にした。



「夏美ちゃんはもううちの子だから!家具も家電も要らないの!ここが今日からあんたの家!!」


またも息の揃ったオネェのダブルサウンドに言われて、なんか、もう胸がいっぱいいっぱいで素直に言葉には出来なくて。
代わりにブンブン縦に頷いて答えた。



するとアカリさんにポンポンと頭を撫でられて、サチコさんはぎゅっとしてくれる。


久しぶりに感じる人の温かさに照れながらも、少ない荷物を片付けて行く。
残した本棚に本を収納して、ローテーブルをラグの上に置かせてもらう。


私の持ってきた小さめのメイクBOXを見るなりサチコさんにこれだけなの?!と驚かれたり。

服もクローゼット用の衣装ケース二段の二つにダンボール二箱分しかないのを見ると今度はアカリさんがえ?、オールシーズンの服でこれだけ?!と驚いてたりした。


貧乏苦学生は服にもメイクにもお金は掛けられなかったんだよ、って私は笑ってサラッと言うと、両脇からぎゅーぎゅーされて苦しかった。



三人でやれば家具も家電も処分してしまった引っ越しの荷解きは1時間ちょっとで終わってしまった。


「さ、夏美ちゃんは手持ちの中で一番可愛いお出掛け用の服に着替えてリビングに来なさい!」


そう言い残してアカリさんが足早に部屋を出て行くと


「夏美ちゃん、着替えたら先に洗面台にいらっしゃい。その後リビングに連れてくから。いいわね?」


そう言ってサチコさんも部屋を出ていった。



しかし、あの二人が納得出来そうな可愛いお出かけ服なんて私は持っていない。

唯一ある、裾フリルのデニムスカートとシフォンブラウスに春色のパステルカラーのカーディガンを羽織って部屋を出て、洗面台に向かった。
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