裏生徒会部+


寝坊してしまい、いつもより遅く家を出た2月14日。

昨日、悠が余計なことを言ったせいで長引いた言い合いのループは「皆さん優しいです!」という香月にしては大きな声の一言で終了した。

まぁ、実際のところあの場の中で優しい奴なんて香月以外誰もいなかっただろうが。


「あれー柊也先輩。ギリギリに登校ですか?」

「おはようございます」

「おはよう」


昨日の一番の問題児である悠と、悠の友達で俺の中学の頃の後輩の吉野 正紀(ヨシノ マサキ)に昇降口前で会った。

2人は朝練が終わり、ちょうど教室へと戻ろうとしたところみたいだ。

吉野は俺の顔を見て何かを思い出したかのように鞄を開け始めた。

そして鞄からリボンで結ばれた小袋を取り出すと俺に差し出す。


「一ノ瀬先輩、これバレンタインだからってさき」

「えぇっ!?吉野…お前……俺がいるっていうのにそんな堂々と告白を…」

「いや、悠にもさっき渡し」

「こうなったら俺も負けてられないな。ってことで柊也先輩、俺からバレンタインチョコですよー!もちろん本命でー」


そして悠も鞄からラッピングされた小袋を取り出し、俺に差し出した。

悠はふざけてやりそうなこと…というか現に見るからにふざけているが、吉野は一体どういうことだ。


「さぁ柊也先輩!どっちを選ぶんですか?」

「チョコだし両方もらうけど」

「わー大胆な二股発言……いや、三股か」

「やっぱお前のはいらねぇ」

「あーもう冗談ですってー!それに俺のじゃないし。稜香からです」

「これも僕からじゃないですからね。咲ちゃんが渡しといてって」


悠は今朝、七瀬 稜香(ナナセ リョウカ)から預かったらしい。

そして吉野は双子の姉、吉野 咲(ヨシノ サキ)から。

咲からのにはよく見るとリボンに「また次は夏に遊ぼうね」と書かれている。

12月の真冬の時期に水風船を使った投げ合いのゲームに参加させられ、次は夏にあると言っていたからそのことだろう。

あれはまじで風邪を引くかと思った。

1年の下駄箱のところへと着き、悠は自分の下駄箱の扉を開けると、上靴ではなくラッピングされた箱を取り出した。

隣で吉野が悠の下駄箱の中を覗く。


「わぁ!いっぱい入ってる!さっきも貰ってたのにね」

「昨日散々食べさせられて正直飽きてるんだけどな…」


どうやらバレンタインのチョコが入っていたらしく、下駄箱から取り出しては鞄の中に入れていく。

中学の時も同じことがあったが、やっぱり悠もモテるんだな。

さすがに仁ほどではないけど。


「ん?これ………あ。静音先輩からだ。『直接渡せなくてごめんね。良かったら食べてね』だって」

「あ!僕も入ってた。浅井先輩から」

「はぁ?吉野も?静音先輩、吉野なんかにあげなくていいのにー」

「いいじゃん、悠はたくさん貰ってるんだから」

「俺は貰いたい人から貰えればいいんだよ。そうだ。柊也先輩は」


そう悠が問いかけた時、予鈴のチャイムが鳴った。


「やばい課題してないんだった!それじゃ柊也先輩!」

「ちょっ…待ってよ悠!一ノ瀬先輩、失礼します!」


走って行く悠と吉野を見送り、自分の下駄箱の前に立つ。

扉に手を掛け、ゆっくりと開けた。

いつもとなんら変わらない。上靴が入っている。それだけ。

上靴を取り出し、交代に靴を入れ、扉を閉めた。

…別に期待なんてしてなかったし。


< 61 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop