この世界は7で終わる
ーーー・・長かった文章はそこで途切れていた。
潮風に晒され、それでも風化しなかった紙切れ。何かに守られていたかのように綺麗なままだった。少女は手紙と呼ばなくていいと言ったけれど、これは確かに過去からの手紙だ。
結局、少女が最後一人残され、どうなったかまでは書かれていなかったけれど。きっとこの場所にこの手紙があったことが他の何よりも彼女の最後を物語っていた。
「へぇ、立派な大樹だな」
男が一人、高台を登ってくる。
「これ、挟まってたのよ。枝に」
「…紙?」
「人間だった少女が書いたものよ、私達に宛てた」
正確には私達のように彼女よりも未来を生きる人間に。少なくとも200年を経て私が受け取ったということは、彼女の望んだ通りになったということ。
「何て?」
「恋人との最後が書いてある」
「へぇ」
「彼女の恋人、例のアレで樹化したの。そしてこの地で亡くなった」
この海辺の高台に大きく聳え立つ大樹はきっと彼なのだろう。
「じゃあ片割れはどうしたんだ?」
「知らないの?あの病気伝染するのよ。感染した人間と一日でも一緒にいればアウト。すぐには発症しないけど、たしか最低でも一週間足らずで症状が出るはず」
この手紙の口ぶりからして、きっと彼女はずっと恋人に寄り添っていた。その先の結末は言うまでもないだろう。
私は読み終わった手紙を丁寧に折り直し、元あった大樹の枝に挟んだ。きっとここにあるのがいい。
「じゃあ、絡まるように枝伸ばしてるこっちの樹はーー・・」
男が指し示すのは大樹の隣に絡まるようにして佇む小柄な樹木。
「せめて、一緒の場所にあって良かった。これならきっと寂しくなかったわね」
一度は生き別れ、そして人の形を無くしてからやっと一緒になれたその姿に、得難い感動さえ覚えた。
200年経った今でも共にいる。それを教えてあげたかった。
「さあ、次の調査に行くわよ」
「次は?」
「ここから東にある美しい塩湖」
二人の代わりに私があのお爺さんに会ってこようと思う。また報告に来るわ。
「どうか末長くお幸せに」そう小さく呟いて、この場を後にした。