先輩から逃げる方法を探しています。




「…そっか。怪我してるならちゃんと治療しなきゃ駄目だろー」

いつもの穏やかな声。

止まっていた手はまた動き出し、傷口を消毒すると丁寧に絆創膏を貼ってくれる。

…あれ?


「あ。そうだ、はる。今週末は空いてる?」

「え?う、うん。空いてるよ」

「よし、じゃあ遊ぼう。いいよな?」

「もちろんいいけど…」

「けど?」


想像していた展開とは違い戸惑う。

まさかまだ俺の名前を呼んでくれて、その上遊びにまで誘ってくれて。


「いいや、なんでもないよ」

「そうか?てか急になんでそんな嬉しそうに笑ってるんだよ。変なはる」

「変なのは耀ちんのほうだよ」

「え?俺?なんでー?」


そして笑顔を見せてくれるなんて思いもしなかった。

初めて会った時も俺のことを怖がらないでくれて、それは今も同じで。

耀ちんと出会えて友達になれて良かったな、なんていつも思ってるけど。

今日はいつも以上にそう感じた。


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