契約書は婚姻届
明夫と西井はいまだに現実が受け入れられてないのか、ぼーっとしている。
ただひとり、有森は朋香にすまなそうな顔を見せ、心を痛ませた。

「では、また明日。
Mein Schatz(マイン シャッツ)」

部屋を出る際、尚一郎に抱き寄せられた。
ちゅっ、唇にふれた柔らかいもの。

「あんたとなんかただの契約婚で、形だけなんだからー!」

「はいはい」

余裕で笑って手を振る尚一郎に腹が立つ。

勢いで決めて後悔することが多い人生だったが、これが一番の後悔かもしれない。
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