契約書は婚姻届
地を這うような朋香の声に再び小さく悲鳴を上げた尚一郎は、クッションを抱いてがたがた震えている。

はぁっ、本日何度目かのため息を小さく落とすと、朋香は苦笑いを浮かべた。

「とにかく、もうしないでくださいね。
……それに、ちょっとだけ嬉しかったのも事実ですし」

機嫌を取るようにちゅっと尚一郎の頬に口付けすると、みるみる顔が輝いていく。

「しないしない、約束するよ」

朋香をぎゅーっと抱きしめると、ちゅっ、ちゅっとキスを落とし続ける尚一郎に、またこんなことになったら面倒だから、このあいだのような墓穴を掘るようなことはできるだけ避けようと誓った朋香だった。
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