契約書は婚姻届
表紙に書かれているのは、最先端医療機器の特集。

毎回渡されるのは医療ジャーナルや介護雑誌、薬剤関係など一般ではほとんど目にすることのない、専門的なものばかり。
内容はほとんど理解できないがきっと、これがオシベグループの事業内容なのだろう。
どの雑誌にも必ずといっていいほど、オシベのグループ会社の広告が入っているくらいだから。

「あ。
尚一郎さん」

近頃出た医療機器のミニ特集で取材を受けた尚一郎が、ページの中で笑っている。

「写真写り、いいな……」

さわれないことはわかっていながら紙の上からつい、尚一郎にふれてしまう。

「元気なのかな……」

尚恭の屋敷に移ってからは一日二回、電話では話している。
朋香が眠る時間、朋香が起きて尚一郎が眠る時間。
けれど、声だけでは尚一郎が元気かどうかなんてわからない。

「いつになったら会えるのかな……」
< 385 / 541 >

この作品をシェア

pagetop