契約書は婚姻届
そのうち、座っているのもつらくなってずっと横になっていた。

「朋香、大丈夫かい?」

顔を見せた尚一郎が、心配そうに表情を曇らせる。

「さっき、薬をもらって飲んだので、大丈夫ですよ」

額にふれる、尚一郎の手がひんやりして気持ちいい。
目を閉じるとゆっくりと髪を撫でてくれた。
おかげで少し、楽になった気がする。

「着いたらすぐに、病院に行こう」

「ちょっと、疲れが出ただけですよ。
そんなに大げさにしなくても」

「ダメだよ。
朋香ひとりの身体じゃないんだから」

それじゃなくても熱が出ているというのに、さらに身体が熱くなる。

はじめて結ばれた日から尚一郎は、朋香はもう妊娠していると決めつけていた。
自覚症状も兆候もなにもないのに尚一郎はベビー用品を買ってきて、苦笑いしたものだ。
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