契約書は婚姻届
「尚一郎さん。
その、あの、……夜、」

「ん?
もしかして朋香、一緒に寝てくれるのかい?」

ぱぁーっと尚一郎の顔が輝き、見えない尻尾がばたばたとうるさく振られているわんこモードで見られると、一気に気分が萎えた。

「寝ませんから!」

思いっきり否定した瞬間、後悔した。
別に、そんなことが云いたかったわけじゃないのだ。

「そうかい。
じゃあ、僕からひとつ、お願いをしていいかな」

尚一郎がにっこりと笑って、意外、だった。
きっといつものように落ち込むんだと思っていたから。

「お願い、ですか」

「うん。
朝は、僕に起こさせてくれないかな。
そして夜は朋香が眠るまで傍にいさせて」

するり、尚一郎の手が頬を撫で、レンズの奥の目が眩しそうに細められる。
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