そんな人生に終止符を。
少女はいつからここに居たのだろうか。
1匹の猫を抱いて。
そんな少女をお構い無しに雨は激しく打ち付ける。

気味が悪い程静かな夜だった。

道を挟むように設置された街灯だけの光では過不足な大きい街だが、そんな街灯すら灯っていない。

今は雨に打たれ、だらしなく垂れ下がっている少女の髪の毛だが、本来は綺麗な黒髪である。服装は和洋折衷、振袖の帯から下が丈の短いスカートになっていて、色合いは黒地にアクセントとして桃色のレースが付けられている。
周りのせいか、はたまた少女の容姿のせいか、不気味な雰囲気を醸し出していた。

“カツ…カツ…”

そんな少女に近付く1人の足音。
ゆったりと遅いリズムを刻む革靴は、どうやら男らしい。

「…あっ」

少女に抱えられていた猫はどうやら驚いたらしい。少女の腕をその鋭い爪で引っ掻いて飛び降りた後、闇へと消えていった。

猫の行方は誰も分からない。

「えっと…逃がしちゃった…かな?」

いきなり背後から声を掛けられたせいか、少女の肩は一瞬跳ねた。

「…気配、消してなかったね。」


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