君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
「……結局、母さんは、姉さんの身を守るために、姉さんを連れて家を出た、というわけ」

「父さんは、最初は離婚に納得しなかったみたいだけど、最後に、子供の、姉さんの幸せの為、と言われて、母さんに同意したみたいだ」

「母さんは、最終的に、自分の身を、白虎に『喰わせる』つもりだったんだよ、そうする事で、白虎の主は一度リセットされる、新しい守護者は、血縁である必要は無くなる、そうすれば、晴れて姉さんは自由の身になれるはずだった……」

「けれど、それができなかった、……あのばーさん、まだ生きてるんだよ、最後の最後で、母さんは失敗してしまった、だから、僕が来たんだ」

「でもね、姉さん、僕、こんな風に姉さんが危機にさらされている現状になってしまったっていうのに、姉さんに会えて、こうして一緒にいられてうれしいって思ってる、こんな風に言ったら、母さん、怒るかな」

 礼門の言葉に、私は、胸が締め付けられるような思いだった。母の苦労、父の思い。それにしても、事の元凶が祖母だったとは……。

「その、おばあさんは、今はどこに?」

「今は、黄金川家の当主代行におさまってる、僕は一応成人はしているけど、学生の身だしね、父の後を継ぐにしても、もう少し時間が必要だ。だから、当主として、姉さんを守る事はできないんだ……ゴメン」

 たまりかねて、征治さんが私の足下に跪いた。

「素子さん、お願いします、どうか……白虎をお継ぎ下さい」

「やめろ、征治!」

「多喜子様を、大奥様を廃して、当主に立つには、全ての守護聖獣の力が必要です、白虎が欠けたままでは、若は……」

 征治さんの言葉で、私の決意はいっそう固まった。

「礼門、私、やるよ、白虎の主になる、そして、おばあちゃんに言ってやる、お母さんに謝って欲しいって」

 お母さんのこれまでが無駄だったなんて思われたくない。お母さんが望んだ結果ではないかもしれないけど、私が白虎を継ぐ事は、祖母にとっては不本意な事なんだろう。
 世のため、とか、人のため、よりも、私の中ですとんと心の収まりがいい。お母さんと、礼門の為に、私は、白虎を継ぐ事を決めた。
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