【長編】戦(イクサ)林羅山篇
秀忠の怒り
 天皇の譲位に何も知らされてい
ない公家たちから動揺が起こっ
た。側近である土御門泰重にも知
らされていないことに京都所司
代、板倉重宗はなす術もなく江戸
に知らせて判断を仰いだ。
 一報を聞いた秀忠は激怒し「帝
を隠岐島に流す」と言い出した。
 家光のもとに稲葉正勝が駆けつ
け秀忠の様子を伝えた。それを聞
いた家光は慌てるでもなく正勝と
共に秀忠のもとに向かった。まだ
怒りが治まらない秀忠は座敷をひ
とり右往左往していた。
「父上、落ち着いてください。今
となってはどうすることもできま
せん。それよりこの後のことを考
えねば」
「これが落ち着いておられるか。
わしにことごとく楯突きおって、
もう許さん。和子とも離縁じゃ」
「何を申されます。父上は朝廷と
戦をなさるおつもりか。権現様が
お聞きになったらなんと申される
か」
< 188 / 259 >

この作品をシェア

pagetop