【長編】戦(イクサ)林羅山篇
春斎と守勝
 家系図の中には戦国の混乱にか
こつけ、名のある武将の家系図に
組み入れるなど偽ったと思われる
ものがあったが、道春はあまり修
正をせず編纂することにした。そ
れは早く作成することを優先した
こと、また詳しく調べる検証方法
もなかったことがある。徳川氏も
藤原氏から清和源氏に改姓をして
いるため否定は出来なかった。こ
うした粗雑さはあったが細かな個
人履歴を網羅しているこれまでに
ない貴重な記録書となる。
 道春はこれに加えて「本朝神代
帝王系図」「鎌倉将軍家譜」「京
都将軍家譜」「織田信長譜」「豊
臣秀吉譜」といった徳川幕府以前
の系譜を作成するように命じられ
ていた。そこで道春は春斎に「本
朝神代帝王系図」「鎌倉将軍家
譜」「京都将軍家譜」「織田信長
譜」を作成させ「豊臣秀吉譜」を
十九歳になった四男、守勝に作成
させることにした。
 二人は道春に指導を受けながら
この年の二月には書き上げること
が出来た。その成果から次に家光
から命じられた「中朝帝王譜」の
作成を春斎に上古から魏、呉、蜀
の三国時代を担当させ、守勝に晋
朝から明朝までを担当させて作成
を任せた。二人は道春の期待に応
え八月には完成させた。
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