【長編】戦(イクサ)林羅山篇
南蛮寺
 羅山はまだ幼い頃、天下統一を
目前にした豊臣秀吉の養子となり
金吾と呼ばれていた。その秀吉か
ら本能寺の変で亡くなった織田信
長の所用していた地球儀を見せら
れたことがあった。
「金吾、よいかこれが我が国ぞ。
どうじゃ豆粒ほどしかない。それ
に比べ異国の広いこと。わしはこ
の異国を手中に治め本当の天下人
になる。金吾にはこの国をやる」
 羅山はそのハビアンに興味を抱
いた。
「ハビアンとやらに会えますか」
「はい。すぐに手配いたしましょ
う」
 貞徳は日蓮宗不受不施派の熱烈
な信者で、誰よりも自分がキリシ
タンに脅威を感じていた。そこで
羅山とハビアンに論争させること
でキリシタンの勢いを止めようと
したのだった。

 ハビアンは京の南蛮寺でスペイ
ン人の神父、モレイジョンの下で
修道士となり布教活動につとめ、
多くの信者を集めていた。
 この頃は諸大名にもキリシタン
となった者がいて、京都所司代の
板倉勝重がキリシタンを保護する
政策をおこなっていたからだ。
 林羅山と弟の信澄が松永貞徳に
連れられて南蛮寺を訪れると、そ
こにいるほとんどが日本人なのだ
がどこか異国のような雰囲気があ
り、宗教を信仰している者が放つ
独特のまなざしで快く迎えられ
た。
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