俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「……早くみなさんのお役に立てるよう、精一杯頑張ります」

「そうですか。期待しています」

その返答はドライで棒読みだった。普通なら上辺だけと解釈するところだろう。
けれど、彼はお世辞を言うような人ではないと、昨日一日でなんとなくわかったから――もしかしたら、本当に期待してもらえているのかもしれないと心が躍る。

「……十五分後に社長室へ向かいます。準備しておいてください」

「わかりました」

私はパソコンを立ち上げてメールの確認だけ済ませると、バッグの中からポーチとハンカチを取り出してお手洗いに向かった。

お手洗いは秘書課を出て廊下の先にある。中に入ると、まだ時間が早いせいか、私以外に誰もいなかった。

個室を出たあと、パウダールームで軽く身だしなみを整えていると、恭子さんが入ってきて、隣の鏡の前にポーチを置いた。

「お疲れ様」

「お疲れ様です」

恭子さんはチークを取り出し、軽く頬に桃色を乗せ直す。
なんとなく居心地の悪さを感じて私が外に出ようとすると。

「昨日は初日から随分遅くまで残っていたみたいね」

突然話しかけられて、私は慌てて「あ、はい」なんて間の抜けた返事をしてしまった。
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