白い虎と蝶 ~絆~


聞こえた声にバッと顔をあげる。



そこには昔……私を愛した人がいた。



それはいつも私にくれた微笑みだった。



私の頬も緩む……訳もなく私の体は軽く震える。



『早くこっちにおいで?』



『やだ!離して!いや……ここから出ないといけないの!離してよ!!』



『ここは……』



微笑んでいたあの人の顔だったものが、ぐちゃぐちゃになって冷たい顔に変わる。



『っっ!!』



『お前がいなければこんなことにはならなかったんだ!お前なんかいなくなればいい!』



でも、あなたが私に……。



顔がまたぐちゃぐちゃになり、見たくない人の顔になる。



『あなたがいなければ私たちは幸せのままだったのに!』



そう……だよね。私がいたから……私なんか死んだらいいんだ。












私がいなくなれば……。

















その場に座り込み、俯く。



すると手元にカッターがあった。



これで、死ねる。



これでみんな幸せになれる、ね。



最後に話したかったな。



名前、呼んで欲しかったな。



つばきって。

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