星降る空で抱きしめて【下】~女子校英語教師と生徒の恋の場合
先生と準備室を出て、誰もいない廊下をふたりで歩く。



「先生は職員室に用事?」

「どうかな?体育館かも。」

「体育館?」

「いいよ、南条には関係ないことだから。」

「ふぅん?」



体育館なら仁科先生かな?

ふたりが仲が良いらしいことをこの間初めて知った。
「暗いから気を付けて帰れよ?」



エントランスまで来たとき、先生の指が私の頬に触れた。

鳶色の瞳の優しく柔らかな眼差しが私を見下ろす。



「うん…またね。」

「さよなら。」



体育館に向かう先生の後ろ姿を見送って、私は学校を出た。



(どうしようっ!イブにデートでイルミネーションとか!

うゎぁ!ドキドキしちゃうっ!!)



ひとりになると改めてデートの約束を思い返して舞い上がってしまう。

両手を胸に重ねる。

先生の手のぬくもりを思い出して、ますます心臓が落ち着かなく騒ぐ。


(あ!そうだ!何着て行こう!?

白いマフラーに合う服、思い切って買っちゃおうかな。)



いつしか足取りも夢の中を歩くみたいにふわふわする。



(ホントに夢だったらどうしよう…)



でも、



『24日、イルミネーション行こう。』



先生の声がまだ耳の奥に残っている。

これは夢のような素晴らしい現実。



想いが私に甘い熱を帯びさせるのか、冷々とした夜の空気も空も今夜は冷たいとは感じないくらい、私はほこほこと幸せを感じながらひとり帰途を辿った。

     *  *  *
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