私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
“店長のこだわり”という文字をクリックすると、すらっと背の高い男性がカウンターに立ち、横向きのアングルでエスプレッソを優雅に淹れている画像に目が留まった。丈の長い黒のバリスタエプロンがやけに似合っていて、ただエスプレッソを淹れているだけなのにすごく様になっていた。

この人が店長? 石堂慧――。

そこには、スフラ本店店長と言う肩書きが書かれていて、今日何気なく行った店が本店だったと知った。

なるほどね、沙耶が騒ぐのもわかる気がする――。

その画像の男性は、正面を向いていないのが惜しいくらい、横姿でもかなり端正な顔立ちをしているように見えた。

“一滴一滴丁寧に抽出しています。確かな品質と厳選された味わいをあなたに……”

なんとなくありふれた謳い文句だったが、実際、今日そのコーヒーを飲んでみてその謳い文句に嘘偽りはないとうなずけた。コーヒー好きとしてはあんなコーヒーを自分で淹れることができたら、と思わず想像してしまう。

――会社が潰れたのは何かの転機だと思って、自分のやりたいことしたらいいんじゃない?

その時、ふと沙耶が私に言った言葉が脳裏を掠めた。

そんなこと言ったって――。
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