【短】コンソメスープが重たくて


 人を愛せないのなら、お店を愛そうと思うようになり、気がつけば仕事が好きになっていた。


 嫌でしかなかった仕事を初めて愛せた場所がカフェ・ルミエール。


 しかし、今では常連客しか足を運ばない場所だ。


 午後五時。
 静かなBGMが流れる店内にいるのは、やはり常連客。


 最終日の今日は早めの六時に閉店。その知らせは店内の壁に貼ってある。


 『閉店のお知らせ』なんて、本当に素っ気ない文章だと瑠美はため息をつく。


 最近は『美味しい』の言葉すら聞かない。
 食事の終わった食器を片付けるのも虚しくなってしまうほどに、瑠美の気持ちは後ろ向き。


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