sugar、sugar、lip
待ってましたの放課後。


既に教室に米倉くんの姿はない。



足早に音楽室に向かうわたしの耳には、いつまで経ってもピアノの音が聞こえてこない。



あれ……?



病み上がりだから帰っちゃったとか……?



まぁ……約束してるわけじゃないし……。


仕方ないよね。



音楽室の手前まで来たところで、引き返そうとしたわたしに話し声が聞こえてきた。



「昨日どうだった?」

「ただの風邪」


声の主は……米倉くんと快登くん。



話題は多分……昨日の米倉くんが休んだ理由。



何となく、入るタイミングがわからなくて入り口の外で待ちぼうけ。



「風邪か……。良かったなぁ」



快登くんのこの言葉が妙に引っかかる。


だって……、



風邪引いて良かったなんて言葉、使う?


「まあな……」

「……朝一から声出ないなんてメール……心臓に悪すぎ」



……なんだろ。



雰囲気からして……普通じゃないし。



なんか、普通に笑って喋ってるのに緊張感があって……。


「ハハッ……悪い」


「無理して、また血吐いたりすんなよ?」




……えっ?





血を吐く……?

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