sugar、sugar、lip
「わたし……奏大のこと……」


「ストップ。言うな」


わたしを振り返った奏大の顔は、すごく真剣で……、



座ったまま見上げられたわたしは、
思わず出掛かっていたはずの
好き、を飲み込んだ……。




「……花鈴と別れてから、もう誰かを好きになるのはやめようって思ってた」


「……どうして?」


不意に出された元カノの名前に、胸がズキズキ痛む……。



どうして……そんなこと言うの?



わたしの気持ちに気付いてる癖に……。



「もう……花鈴みたいな思いさせたくないし、したくない」



わたしから視線を外した奏大が小さく呟く。



ねぇ……?
なんでこっち見ないの?





……ズルいよ。





「誰と比べてんのよ……」


「えっ?」


「わたしは花鈴って娘じゃないわ。アンタが入院しようが退院しようが心配なんてしないんだからっ」



言ってやった……。


わたしは花鈴って元カノとは違うんだから……。



辛いからって、



他の男のところに行ったりしない。



例え……辛くったって……。
< 69 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop