悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
「私を排除しようとした者たちとは……」

ゴクリと唾を飲み込んで尋ねれば、彼は静かな怒りのこもる声で教えてくれる。


「死んだ暴れ馬の首には、太い針が刺さっていた。今、調べさせているところだが、おそらくは神経毒が塗られていたのだろう。それを馬に刺すことができた人物はただひとり。アクベス家の騎手だ」


そこまでは私の予想の範疇で、やはりそうだったのかという思いで聞いていた。

けれどもその後に続いた言葉は、とても彼のものとは思えないほどに冷たくて、ゾクリと肌が粟立った。


「あの男の身柄は拘束し、尋問中だ。誰に命じられたのかを言わないそうだが、拷問にかけてでも必ず吐かせてみせる」


暖かな部屋の中、私の背には冷や汗が流れる。

いつも朗らかで、真っ白な心を持つ彼は、かつて彼自身に暗殺を仕掛けた兵士にまでも、同情を寄せていた。

それなのに、どうして今回のことには、そこまでの怒りを表すの……?


「拷問だなんて、レオン様らしくありませんわ。笑顔で人に優しくとお教えくださったあなたは、どこへいきましたの? あなたを斬りつけたベイルという兵士にまで優しいお心を見せていらしたのに」


人が変わってしまったのかと恐れて、彼の胸の内を心配する。

そんな私の問いかけには答えず、彼は包帯の巻かれた私の手を取り、「痛かっただろう? かわいそうに」と独り言のように呟いた。


負傷した手のひらに口付けて、彼は静かに目を閉じる。

私の速い鼓動が二十拍ほどを刻んだら、やっと唇が離され、瞼を開けた彼と視線が交わった。
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