悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
アクベス家の母娘に対しては、わずかに同情するところがあり、苦しさのあまりにそれを消し去ろうとしたためだ。


三日前、母が辺境伯領から王都へ到着したという知らせを受けて、私は一時帰宅した。

そのときに、今回のアクベス家の取り潰しについて家族で話し合ったのだが、父にはダービーの件に関して『よくやった』と褒められた。

企んだのはアクベス家側であり、私はなにもしていない。ただ愚かにも罠にはめられて、レオン様に助けられただけなのに。

上機嫌な父に頭を撫でられ、「さすがは俺の娘だ」と満足げに頷かれては、罪悪感が湧いてくるというものだ。

まるで私が、謀の末にロザンヌ嬢を追放したような、嫌な気分になる。


アクベス家とは過去の深い因縁もある。

母の一族はアクベス家と組んだ隣国に奇襲され、領地を奪われた。

母としてはやっと雪辱を果たせたという思いで、父以上に喜ぶのだろうと思っていたのだが……違った。

母だけは私の苦しみを感じてくれて、そっと抱きしめてくれたのだ。


『あなたはなにも悪くない。アクベス家との決着を先延ばしにしてしまった私に全ての罪があるわ。オリビア、ごめんね』


母のおかげで、私は今、なんとか罪悪感に打ちのめされずに心を保つことができている。

ロザンヌ嬢のことは気掛かりだけど、気持ちを切り替えて先に進まねばならない。
< 234 / 307 >

この作品をシェア

pagetop