悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
麗しい彼の顔を思い浮かべながら、アマーリアとふたりで静かにお茶を飲んでいると、ドアがノックされた。

「どうぞ」と声をかければ、ドアを開けて姿を見せたのは、先ほど私の着替えを手伝ってくれた若いメイドだった。

困り顔をしているように見える、彼女の用向きはなんだろう。

式典のあった今日は侍女の仕事はしなくていいと言われたのに、王妃の気が変わって、私を呼んでいるのかしら?


そう予想して私はアマーリアを置いて立ち上がり、メイドのそばまで行く。

小さなため息をもらして、「王妃殿下がお呼びなのね?」と尋ねれば、彼女は「いいえ、王妃殿下ではございません」と否定してから、内緒話をするように口の横に手を添えて私に耳打ちした。


「オリビア様をお呼びになられているのは、アリンガム王国の王子様です」

「え……?」


アリンガム王国のアンドリュー王子は、ルアンナ王女の婚約者。

いや、まだ婚約は決定ではなく、ルアンナ王女が乗り気でも向こうが渋っている状況だと聞く。

どうやら彼女は王子の好みではないらしく、なかなか結婚話が進まないそうだ。

それで今日は橋の竣工式にかこつけてアンドリュー王子を招き、式典では王女の隣に並ばされていた。

私は王子と言葉を交わす機会はなく、挨拶さえしていないというのに、なぜ呼び出されるのかわからなかった。

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