最後の花火
「なにが」

 食器を洗うのにふたりになれたから、さっきの炊飯の話はどういう返事をするのが最良だったのかと恐る恐る尋ねた返事がこれだ。


「だから、あのね」

 いま一度紗菜が説明すると、希は苦笑を浮かべて皿をすすぐ水を止めた。

「気にしすぎてるよ」

「そうかな」

「あたし、サッカー部の女子マネージャーなんかしてるとさ、男に媚びてるって陰でしょっちゅう言われんだよね。はじめのうちは、そんなことないよっていちいち言い返していたんだけど、途中からめんどうくさくなっちゃって」

「めんどう……」

 希には通じないかと思ったがそうでもないようだ。女子マネージャーの仕事も紗菜が心配した種類の誤解を招きやすい。


「自分の時間を人のために費やしてるのに辛いね」

 思ったことをもらしただけだったが、希は大袈裟なくらい両手を振って話を続けた。

「それはいいの、いいんだけどね。で、どうしたかというと、誇張して悪ノリしたり、目開けたまま寝てて聞き流したことにしたり、適当にごまかしていたわけ。バリエーション増えすぎて、おまえは芸人か、って彼に言われたこともある」

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