最後の花火
 彼の名前は確か幹仁(みきひと)だ。自信がないから、誰かが呼ぶまでは声に出さないでおく。

 閉ざされた襖のあちらから複数の男性の笑い声が聞こえてきて、それだけで紗菜の身体に緊張が走った。開けるね、と前に立つ彼が振り返ってくれたので気分が少し楽になった。続いて座敷に足を踏み入れた。


 浅黒く日焼けした男の子たちが一斉にこちらを向いた。怖じ気づきながらも紗菜の目は奥から二番目に座る人物に吸い寄せられるように止まった。

 いた、と思った。ほっとした。来る約束になっていたのだから、いてもらわなければ困る。
 紗菜は挨拶を済ませると入口近くの端に座った。
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