イジワル外科医の熱愛ロマンス
その日の帰り、美奈ちゃんに『話し足りません!!』と腕を取って言われ、大学の最寄駅の駅ビルに立ち寄った。
セルフサービス形式のカフェでそれぞれ会計を済ませ、奥まったカウンター席に移動する。


店内は女性一人少人数のグループ客ばかりで、それほど混雑していない。
私たちは二人並んで椅子に座り、まるで会話を始める準備をするように、ドリンクで喉を潤した。


頭が疲れて甘い物が欲しくなった私は、普段あまり頼むことのないホットのキャラメルラテ。
美奈ちゃんは喉越し良さそうなアイスロイヤルミルクティーというチョイスだ。
ストローで三口一気に飲んだ後、美奈ちゃんは「はあ」と声に出して息を吐き、横から私を覗き込んできた。


「もう聞いても大丈夫です?」


有無を言わさず、ここに連れてきた割に、美奈ちゃんはそう言って私のタイミングを窺う。
そんな彼女に苦笑して、私は「はい」と頷いた。


「なんかもう……お二人に話してみたら、ちょっとスッキリしました」


美奈ちゃんには、木山先生に話したのと同じく、祐が元婚約者だということを告げた。
それが、お互いの気持ちもなく、もちろん恋愛関係から発展したものでもない、いわゆる政略結婚だということも。
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