イジワル外科医の熱愛ロマンス
そして、ベッドサイドにパイプ椅子を開いて、そこにドカッと座った。


「そ、それなら、祐だけでも先に……」


申し訳ない気持ちでいっぱいで、口元まで布団を引っ張り上げて、ボソボソと呟く。
窺うように目線を上に向けると、祐は唇をへの字に曲げて私を見遣った。


「別に急いで帰る用もない。お前、寝不足で貧血起こしてぶっ倒れたんだぞ。……俺のせいだろ」


胸の前で腕組みをして、淡々とした口調で私を遮る。
彼が言った『俺のせい』という言葉にドキッとして、私は口ごもってしまった。


「違うか?」


チラリと探るような視線を向けられ、ゴクッと唾をのむ。
布団を目元まで上げて隠れてしまいたかったけれど、それはなんとか堪える。


聞きたいことはたくさんあった。
言いたいことだって。
今日仕事が全部片付いたら、祐とちゃんと話をしなきゃって、私だってそう思っていた。
今、やっとそのチャンスなんだ。
躊躇って怯んでる場合じゃない。


「はい。……祐のせいです」


目を逸らし、掠れる声でそう言った。
緊張して、胸がドキドキと加速し始める。


「あんなこと言うから。祐のことばかり考えて、全然眠れませんでした」

「俺もだよ」


思い切って口にした私に、祐が静かに畳みかけた。
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