イジワル外科医の熱愛ロマンス
不愉快そうに吐き捨てる祐の声が、私の耳の鼓膜をつんざいた。
彼の言葉は、私の胸を真正面から深く抉るように貫いた。


私が廊下側の壁に寄りかかり凍りついている間に、友人が祐に振る話題の中心は、私から逸れていった。


『じゃあさ。たとえばどんな子だったらいいんだよ? お前モテるんだからさあ。彼女作ろうとか思わねえの?』


それに対して、祐が学年一可愛い子の名前を口にするのを聞いて、更に胸がズキッと痛んだ。
二人が会話をしながらドアに向かってくる気配を感じて、私は急いでその場から離れた。


とにかく、この話を私が聞いていたことを知られたくなくて。
傷付いて泣いてる顔を、祐に見られたくなくて。


あの後――。
私は家に帰ってもワンワン泣いた。
声が嗄れて、身体中の水分が枯渇するんじゃないかと思うくらい、涙を流した。


泣きすぎてパンパンに腫れあがった顔は、自分でも見たくないくらいブサイクで、鏡から目を背け続けた。
そのうち、自分の顔を鏡に映すのも嫌になった。


祐に『ブス』と言われた顔を人に晒したくなくて、顔を俯けて、目を伏せて過ごすようになった。
同じ学校だった高校生までは、祐の視界に入らないように、コソコソと隠れる日々……。


もともと、学校で祐と話すことも、既にほとんどなくなっていた。
『幼なじみ』というだけで冷やかされることもなくなるほど、疎遠になるのは簡単だった。
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