イジワル外科医の熱愛ロマンス
そんな私の反応に満足したのか、どうやら祐は背筋を伸ばして姿勢を正したようだ。
私の手元に、わずかに明かりが戻ってくる。


「そうやって、頭ん中、俺でいっぱいにしとけ。雫」


そんな不敵な言葉を言い残し、トントンとデスクを指で叩いた後、彼は白衣の裾を翻して木山先生の方に戻っていった。


「先生。俺が引き継ぐ講義のオリエンテーションの件で、ご相談したいことがあるんですが……」


祐がそう声をかけた時には、木山先生と美奈ちゃんの言い合いも終了していたようだ。
祐の革靴の踵がコツコツと鳴る中で、木山先生が「ああ」と返事をしている。


「そうだったね。じゃあ、隣の応接行こうか」

「はい」


二人のドクターが連れ立って医局のドアに向かう。
二人の足音が、バラバラとした不協和音を奏でながら遠のいていくのが感じられる。


私は祐に握られた手にもう片方の手を重ね、ギュッと力を込めた。
そして肩を怒らせ、固く唇を噛み締める。


『俺がお前から受けた屈辱を晴らす方法』


さっき祐が言ったその不気味な響きを含んだ言葉の意味が、ジワジワと私の胸にも侵食してくる。
屈辱を晴らす。
つまり、私のすべてを奪うというのは、彼の私への復讐だ。
息をするようにあっさりと奪ったキスも、そこにあるのは一方的に婚約を解消した私への腹いせでしかない。
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