イジワル外科医の熱愛ロマンス
だって、ここは私の部屋。
いつもと変わらず、一人で寝ていたはずなのに、私はいったい誰に聞き返したというの。


そんなツッコミを悠長にしている場合ではなかった。
誰かいる!?と認識した瞬間、私はガバッと上体を起こし……。


「っ、きゃ、きゃあああっ!?」


ベッドの傍らに仁王立ちしていた人影に驚き、絶叫した。


「バカ、朝から騒ぐな。うるせー」


途端に不機嫌な声が返され、ベッドを蹴って逃げようとした私は、その大きな手で口を塞がれてしまった。


「うぐっ、むむうっ……!?」


ギョッとした後すぐに続いた恐怖に駆られ、私はその手に両手をかけながら、バタバタと足を動かした。


逃げなきゃ。
すぐに部屋を出て、澄子さんなり両親なりに助けを求めなければ……!!


「ど、ドロボ……!!」


今出せる最大音量の声を振り絞り、急いでベッドサイドに進み、床に足をついた。
けれど。


「だから、泥棒じゃない。騒ぐな」


泥棒じゃなくても、不審人物には変わりない。
その上、命令調の短い言葉はどこか物騒。


スリッパを足に引っ掻ける余裕はない。
裸足のまま立ち上がり、必死に逃げ出そうとして。


「おい、待て」


私はその人影に抱き止められていた。
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