白のアリア
もう一人の悪魔
「はじめまして、アリア姫。私がケルンだ」

 ケルンは思っていたより若く、20代前半の青年といった感じだった。物腰は柔らかく、終始にこにこと穏やかで、アリアはなんと言っていいか分からなかった。

「手荒な事をしてすまなかったね、アリア姫。
しかしどうしてもアリア姫の協力が必要だったんだ」

「協力?」

「うん。もし協力してくれるなら、命の保証はするよ」

「私に何をさせるつもりなの?」

「なに簡単な話さ。これから君の命を立てにこの国の実権を握る。そしたらあの暖かい南の国、君の生まれ故郷に攻め入る。でも例え力で鎮圧しても
人々が従うとは限らない、そこでだ……」

「君にその国の女王になって欲しい」

 あまりに荒唐無稽な話にアリアは握っていたフォークを落としてしまった。正直こいつ馬鹿なのではないかと呆れてしまう。
 しかしケルンの目は真剣で、きっとその為にたくさんの血が流れても貫き通すのだろう。そんな事させてはいけない。

「ケルン様。今、ルリカから知らせが。
クルス王子を捕えたそうです」

「そうか、アリア姫食事中にすまないね。大切な用事が出来てたんだ。この話はまた……」

「待って!」

 ケルンが不思議そうに振り返る。

「あなたはクルスを、白い悪魔と呼ばれる人を嫌っていたのでしょう?それなのになぜ?」

「アリア姫、考えというのは常に変わるものさ」

 ケルンはにやりと笑いかけた。
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