たった一度のモテ期なら。
5章 揺れる心に上書きしてよ。
自分から動く。気持ちを伝える。言うは易く、行うは難し。

結局そう呟いていただけの今週は何事もなくつつがなく過ぎていき、もう金曜の午後。

間違えて格納してしまったらしい書類箱を探しに行くだけの簡単な用事を頼まれているところ。

さっき立ち寄ったけれど西山は席にはいなかった。スマホもしまってあるから呼び出すなんてできないしね、と自分に言い訳をしながら経理倉庫に向かった。

非常階段脇のエレベーターに乗り込んで階数ボタンを押す。

扉が閉まる前に、ちょうどPCを脇に抱えて歩いてきた西山と目が合って「あ」と声が出てしまった。

階段に行く途中のはずの西山は、閉まりかけたエレベータードアを片手で押さえて中に入ってきた。

「なに? なんかあった?」

「違うの。チロルチョコ置いといたよって言いたかっただけ」

「ああ、それか。先輩面白がってるだけだから気にするなよ。でもありがとう」

お礼の後で思い出したように「いいことあるといいな」と付け足した。

え?なんでそれ、知ってるの?

「俺2階」

話しているうちにまた閉まってしまったドアの横でボタンを押して、狭い箱の中に沈黙が落ちる。2人だけってあの時以来でかなり気まずい。

でも、話があるっていうなら今がチャンス?


< 78 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop