たった一度のモテ期なら。

「どこまでされた?」

心の声が伝わったのか、唇だけを離して小声で聞かれる。

「あいさつみたいな、ちょっとだけ」

「それだけ? このくらい?」

「うん」

触れるだけのキスにそう答えたのに、もう一度。優しく、ちょっとずつ溶かすようなキス。

「そんなんじゃなかったってば」

「いや、まだ上書きしきれてない」

終わる気配がないキスに、いつしかベッドに座らされている。もう完全にされるがままに、私は心地よく身を任せながら彼の身体に腕を回した。

「昨日、やばかったってわかってるか?」

抱きついた形の私を少し離すようにして、西山が話しかけてくる。

「エレベーターあのとき動いてなかったら何されてたかとか、想像できてないだろ」

「何って」

疑問には答えをくれず、もう一度深く口づけたままベッドに私を押し倒していく。

「こういうこと」

まさか。あんな場所でそんなことするわけない。でも苦しそうな目をしているのはなぜなんだろうと、その目を覗き込んだ。

「逃げるんなら今が最後」

「逃げないよ」って言い終わると同時にまたキスされていて、その後はもう言葉がいらないってわかった。

西山が今、私を見てる。今この瞬間、対象外じゃない自分がいる。もうそれだけでよかった。

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