寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

震える体に毛布を被りファンヒーターの出力を最大限に。その前に陣取って暖を取る。

私の不運続きは今に始まったことではなく、子供の頃からという非常に年季の入ったもの。どういうわけか私にばかり悪いことが起こるのだ。
坂道を転がり始めたボールは未だに降下中で、長い長い下り坂の先がまったく見えない。

大学卒業後に入社した会社が二ヶ月で倒産し、それからはアルバイトで食いつなぎながら就活をしている。

田舎の両親は帰っておいでと言うが、せっかく大学を出してもらったのにフリーターを経て結局Uターンでは申し訳が立たない。
もう少しだけ、あともう少しだけと引き延ばして今日までやってきた。
この頃は、両親が営む町工場に従事するのが私にはぴったりなのかもしれないと考え始めている。

今日受けた会社の最終面接も、きっと良い結果は得られないだろう。
いつものごとく自分をアピールすることなど、これっぽっちもできなかったし。
それに帰り道にこんなひどいことになったのだ。
私は運というものからは、果てしなく遠いところに存在している気がするから。
そもそも高望みをして受けた会社だし、一生こんな感じで過ぎていくのだろう。

もう寝ようと、立ち上がったときだった。
部屋のドアノブがガタガタと音を立てたことに驚いて、体がすくみ上がる。

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