カフェの人々
新顔の男
 

 天気予報士が梅雨入り宣言をしたその日、濡れた傘を店の入り口でビニール袋に詰める作業以外はいつもと同じ朝のはずだった。

 同じオーダーを手に持った同じメンバーがそれぞれの定位置に腰を下ろす。

 でもその日は違った。

 スマホいじりの眼鏡男の定位置に先客がいたのだ。

 一瞬男はたじろぎ辺りを見回すと、トイレに近い隅の席に腰を下ろした。

 先に自分の定位置についていたいつものメンバー達はその姿を視界の端に置きながら、ほんの少しだけトイレの近くに同情する。



 眼鏡男の定位置をぶんどったのはスーツに身を包んだ男だった。





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