きっと、ずっと、恋だった。
卒業まで、あと3日。




少しだけ開いた教室の窓から、温かい春の風が入り込む。


外では咲き始めた桜が風に揺られている。


黒板にはよくわからない数列と、よくわからない説明をする数学の先生。


窓際の後ろから二番目の私の席の前には、秋樹の背中。


染めたことのない黒髪が太陽の光に透けて、細く見えて意外と筋肉のついた背中は、少しダボっとした紺色のカーディガンに隠されている。





あ き 。




もう数え切れないほど呼んだ、その名前を。


私だけが呼ぶ、きみの名前を。



声には出さないように、きみの背中に向かって口だけ動かした。



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