lingerie


理解が追いつかなくて、「は?」と聞き返した。

「昨日言ってたけど、皆口さんはどうして私に触れようとしないんですかって。なら触るように仕向けてみりゃあいいんじゃないのって」

「なに馬鹿なこと言ってんですか。酔った女の血迷った言葉なんて信じちゃ」

「それでもお前は男の俺が女のお前に触れないことで傷ついてるんじゃねーの?」

確かに、お前とはやるかと直接言われて複雑な気分になったがそれとこれとは別じゃないのか。ここで一発!ってわけにはいかない。流石に。

だが、理性がブレーキをかけているのに、決壊させるのがこの男だった。


「お前に誘惑されて見たかった、けどね」

その言葉がどんな破壊力を持ってるか知ってるから発したのだろう、彼は。
私が少しだけ目線で追っていたとき、いつもちゃんと目があったことも知っているんだろ。

この言葉こそが誘惑だった。

『あの人に逆らえないんだよね』と言っていた皆口さんのセフレの意味がわかる。あの時の言葉を聞いて少し興味を持ってしまった。

口の中がカラカラに乾いていく。干上がり寸前だ。指先と唇が震えた。心臓は熱く、痛い。

この男の噂は全部女性にまつわるもの。だからこそ、惹かれる。

「悪い男だなぁ、皆口さんは」

差し出せというのか、私自身から。

「さっき、あんなに冷たい顔してたくせに今では私に興味持ってるんですか。とんだ変態ですね」

「あの時は痴女だけど、今は女の顔をしてるからな。珍味も味わうべきだろう?」

「癖になっても、これっきりだから」

「なら癖にさせてくれ」


背中を向けて、裾を捲り上げる。
きっとホックは露わになっているはずだ。
私は最後の砦を簡単に手放した。

「脱がせて」



悪い男に頭の悪い女が溺れていく。
最後の砦は簡単に突破される、突破されることがそこにある意義なのだ。


end
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