Miss you・・・
「ったく。おまえってやつは・・・」と蘇我さんはブツブツ言いながら、隙をついて、私の額を人差し指で、軽くチョンとつついた。
私は「あうっ」と言って両手で額を押さえ、上目づかいで蘇我さんの様子を伺った。

「いたかねえだろ」
「・・・いたくないです」

私たちは見つめ合い・・・そしてゲラゲラ笑った。
先に笑い終えた蘇我さんが、不意に真顔になった。

「俺、死にかけた経験あるせいか・・・好きなんだよ、一生懸命生きてるヤツが」

私は笑うのをやめて、蘇我さんの顔を見た。

「おまえ見てると、一生懸命生きてるのが伝わってくる。そんなに華奢な体してんのに、明を小脇に抱えて、ずっと全力疾走してるように見えるんだ。だからおまえと明を助けたいって思った」
「蘇我さん・・・」
「正直言うと、俺は結婚することにこだわっちゃいない。俺もだが、おまえも結婚には幻滅してるようだし」と蘇我さんに言われて、私は「そのとおりです」とキッパリ言いきった。

私には明もいる。
だから男の人とおつき合いすること自体、考えてもいなかった。

蘇我さんに出会うまでは。
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