全て美味しく頂きます。
 「「頂きます」」

 手を合わせて挨拶すると、競うようにお鍋をつつく。
 100円ショップのお椀にお箸は、何だかオママゴトみたいで楽しい。

 と、無言でがっついていた彼がポツンと言った。

「そういやあ長谷川ん家ってさ。えらく殺風景なのな。もっとごちゃごちゃしてるかと思ってたのに、何か意外。
 あ、それ取って、もみじオロシ」

「…ホイ。祥善寺は辛いのいけるんだね、私も好きだよ。唐辛子とか」

「ありがと。
 …いやさ、前の同期会の後、ゲーセンで盛り上がっただろ。みんなで限定のヌイグルミ取るために、かなり金かけてさ。
 終いには吉田に取ってもらって、長谷川すげえ喜んでたよな。
 あれももう置いてないの」

「…んー…彼がね、そういうの嫌うから」

「無理してんねえ」

「放っといてよ、そらっ」

「んぐっ…ぅ熱っ、辛っ」

 私は、イヤミったらしく言った彼の口に、オロシをたっぷりのせた豚肉を放り込んでやった。
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