全て美味しく頂きます。
 嘘みたい。
 だけど私は、
 私の返事はもう__

「あ,あの…私は…」

「ま,待て!」

 もじもじと返そうとした私を,彼はあわてて制した。


「は?」

「待つんだ…返事は明日聞く」

「え?今じゃダメなの?…その…いい方でも?」


 一瞬,彼の耳がぴくっと動いたが,彼はすぐに首を振った。

「ダメだ。明日にする。もし,い,いい方でも…酔っぱらってるし,色々あった後で気持も昂ぶってるし…長谷川が正常な判断を下せない可能性もある。
 俺は素面の長谷川から,ちゃんとした気持を聞きたいし__

 明日の飯が一日残ってる。今日聞いてしまうと,食い損ねる可能性だってあるんだ。もしかしたら,最後かもしれないしな」

 真っ直ぐに私を見る眼差しはあくまで真剣。
 だがその潤んだ瞳は不安そうに揺れていた。

「___分かった」


 その後は,そんな話は全くなかったように,再び元のバカ騒ぎに戻っていった。
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