only



ついて来ると思ったけど、



なぜか彼女は悲しそうな顔をしてこっちを見つめるだけだった。



「何してんの、早く!入学式遅れるよ」



笑顔で言っても足を踏み出そうとしないから、強引に手を引っ張っていった。


掴んだ右手は、今にも砕けてしまいそうなほどか細いくて。
〝ありがとう〟と言うその声は、今にも消えてしまいそうなほど小さい。



そして〝友達できて嬉しい〟と言うと、また悲しそうな顔をした。

おまけに今度は泣きそうだ。

「大丈夫? さっきから泣きそうだけど」




きっと何かあるんだ。


そう推測した。



「髪、かわいい」



花びらを取って、ポケットにしまう。


もう何も聞かなかった。

ーーそれが、俺の優しさ。
< 22 / 87 >

この作品をシェア

pagetop