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第5章

勇気



自己紹介は昔から苦手だった。

人前で自分のことを話すなんて、お父さんのことがあってからはなくなっていた。

しかし入学式の翌日に自己紹介をしない学校なんてない。

私の学校もやはり、一人一人席を立って話すよう促された。

クラスメイトに関心を持ってはいけない。
持たれてもいけない。

私なんて、空気みたいに扱ってくれればいい。

誰も望まない、ただ静かに生きていければ。


だけどふと、私の頭を太陽のような笑顔がよぎる。


今朝は待ってくれていた。
隠そうとしているのだろうけど、分かっている。


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