五感のキオク~好みの彼に出会ったら~


「だから、あんたに彼女なんていなかったなんて知らなかったし。
正直、あの頃は全く自分の気持ちにも気づいてなかったわよ!」


もう、何でこんな事。

私が言わなくちゃいけないのか。


「だいたいね。そういう事、最初っからちゃーんと言っておきなさいよ。
それにね、あんたの好意はわかりづらいのよ!!!」



すべて言いきった私はゼィゼィと肩で息をする。


「ほっんとバカ。何でこんなバカ、好きになったのかわかんないからっ」

「は?!バカってなんだよ。っていうか、好きって?」


大きく目を見開いてこっちを見る愛しいバカにもう一度。


「だから好きだって言ったのよ、バカ」

「バカは余計だって」


この上なく優しい瞳で見つめて言う同僚という立場の愛しいバカ。


「…ったく。もっと色気持って言えねーの?」

「言えるわけないでしょ?!こんなに言っても通じないのに!」


そして、彼の伸ばしてきた腕に縋りつくようにして抱きついた。




彼の腕の中はこんなにも温かい―――
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