五感のキオク~好みの彼に出会ったら~


「あの人、老舗ブランドの会社の跡取り」

「へ?そうなの?」

「うん、なんとなく、あれだろ?育ちがいい感じ出てんだろ?」

「……まぁ、そうだね」



育ちがいい感じ。

うん、それはさっきも思った通り。

でもまさか、社長の息子とか思いもしなかった。


社長の息子だからとかじゃなくて、彼の持つ雰囲気そのすべてが私の心をとらえていた。



「社長夫人なんて狙ったって、無駄無駄」

「はは、そんなの狙ってないって。ただなんとなく彼に興味があるだけ」

「興味があるなんて、おまえから久しぶりに聞いた気がするけどな?」

「そう、かな?」



人に興味がないわけじゃない。

けれど、執着なんてものもない。

それに彼とは直接言葉を交わしたわけでもない。

それでも彼の存在そのものが私の興味をそそる。



「ま、とりあえず飲めば?」



そう言って同僚がどんどん酒をすすめてくる。

彼の瞳の奥にちらりと見えた欲に目を瞑りその酒を飲み進めた。
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