君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「うふふ、ありがとう。

あなたのような可愛らしい方が義理の妹になるだなんて、嬉しいわ」


「いえ、あの、私たちは婚約しているわけでは……」


「聞けば、そのためにあなたはお勉強中だと言うじゃない」


その事を言われると頭が痛い。私は今も怒濤のようなレッスンを受け続けている。


「効果が出てるかどうか怪しいんですけどね……あはは……」


「出ていないとすれば、それは講師の責任だわ」


私の両肩に手を置いて、かぐやさんの瞳が光ったような気がした。


「あなた方二人は、私にとっては恩人ということになるのだし、礼儀作法についてはこの私が手ほどきさせていただくわ。プロトコールを身につければ、あなたはもっと強くなれる」

「ぷろと……こーる?」


礼儀作法って強くなるために習うのかな、という漠然とした疑問が浮かんだ。横から割って入った澪音が、慌ててかぐやさんを押しとどめている。


「柚葉にそんな恐ろしいことさせられるか。いいって、余計な気を回さなくても」


「あら、澪音。あなたって本当に失礼な男に成り果てたのね。可愛かった昔はどこへ行ったのかしら」


たじろぐように苦笑いする澪音。澪音が「恐ろしい」と言うかぐやさんの講義なんて、私はきっと身が持たないに違いない。


「お心遣いは嬉しいのですが、そんなことお願いでき……」


「遠慮は要らなくてよ。この私に任せなさい」


固い意志のかぐやさんの様子に、澪音が頭を抱える。いつのまにか近くにいた弥太郎さんまで、「あきらめろ」と私を同情的な目で見ていた。
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